フィルムは記録する

ツェッペリン来たる

1929年の世界一周飛行途上の8月19日から23日にかけて日本を訪れた飛行船ツェッペリン伯号の記録。本作ではツェッペリン伯号が霞ヶ浦の飛行場を通過して東京上空を周ったのちに飛行場に戻って着陸するまでと、船長のフーゴー・エッケナー博士ら一行の東京訪問と日比谷公園の東京市民歓迎会の模様を中心に構成されている。終わり近くの「霞ヶ浦に滯在中のツエ伯号」の中間字幕の後は、格納庫に収められたツェッペリン伯号を軍人や一般市民に加え、朝鮮王室の昌徳宮李王垠が見学する姿が記録されているが、検閲記録と照合すると、この中間字幕以降は独立した作品だった可能性がある。また、飛行場で見学者たちにふるまわれる乳酸菌飲料の森永コーラスや、森永製菓創業者の森永太一郎が帝国ホテルにエッケナー博士を訪ねたことを伝える中間字幕とチョコレートの詰め合わせの贈り物のカットなどから、森永製菓が本作の製作に関与していたことが考えられる。トップおよびエンド・タイトルは欠落しており、一部に裏焼の箇所がある。

作品詳細

作品番号
ST000184
映画題名
ツェッペリン来たる
映画題名ヨミ
ツェッペリンキタル
製作年月日
1929
時間(分)
11
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
検閲番号等
以下の検閲記録は、元素材と関連する可能性がある。
1929年8月21日
D9722、日、實、時事、ツェッペリン來る、1巻、205m、東京シネマ商會(製作者、申請者とも)、新
1929年8月22日
D9745、日、實、時事、霞ヶ浦に滯在中のツエ伯號、1巻、36m、東京シネマ商會(製作者、申請者とも)、新
フィルム映写速度
18
備考
元素材は、1968年にアメリカ議会図書館より返還された35㎜可燃性ポジフィルムを不燃化した35㎜デュープネガ。
返還時の記録および福間敏矩氏(東京国立近代美術館フィルムセンター元主幹)による調査から題名を『ツェッペリン来たる』とした。
参考文献
藤波健彰『ニュースカメラマン 激動の昭和史を撮る』(中央公論社、1977年。文庫版は1980年)71頁[文庫版]
白井茂『カメラと人生―白井茂回顧録―』(ユニ通信社、1983年)95頁。
『第4回特別展図録 夢の空へ ツェッペリン伯号と初期航空機の時代]』(土浦市立博物館 編、1990年)
「ドイツ先端技術への驚き-1929年ツェッペリン飛行船到来」(国会図書館 本の万華鏡)https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/7/3.html