社会教育映画 我等の運命
飲酒と喫煙が身体を害するだけでなく家計にも負担となり、それが社会全体に悪影響を与えていることを、俳優を使った演出場面やアニメーションを交えつつ、様々な統計を挙げて解説する禁酒禁煙奨励映画。禁酒運動家の成瀬才吉の原案を基に、大阪市西成に拠点を置いていた藤谷プロダクション(藤谷教育映画製作所)が製作・撮影を行った。エンドタイトルは欠落している。
作品詳細
- 作品番号
- ST000190
- 映画題名
- 社会教育映画 我等の運命
- 映画題名ヨミ
- シャカイキョウイクエイガ ワレラノウンメイ
- 製作年月日
- 1928
- 時間(分)
- 12
- サウンド
- サイレント
- カラーの種類
- 染色
- 製作会社
- 藤谷プロダクション
- スタッフ
- 成瀬才吉[提案]藤谷プロダクション[撮影]
- 検閲番号等
- 1928年2月2日
C873、日、混、敎、我等の運命、1巻、225m、藤谷プロダクション(製作者)、靑木匡濟財團(申請者)、制限フ一、新免
「制限フ一」とは制限事項として切除が1か所(全0.5m)あったことを示している。切除は以下の場面である。
「巡査が囚人を手にて突き飛ばす箇所」切除〇、五米(公安)
なお、元素材には、この切除箇所に該当すると思われる場面が含まれている。 - フィルム映写速度
- 16
- 備考
- 元素材は、2008年度に髙田準三氏より受贈した35㎜可燃性染色ポジフィルム。
髙田準三氏は、1899年神奈川県茅ヶ崎に結核療養所・南湖院を設立した医師でキリスト教徒の髙田畊安の直孫。南湖院では、患者の慰安と地域住民との交流を目的に、毎週土曜日に映画会が催され、院の催事を記録した映画とともに、独自に収集した教育映画や文化・記録映画の上映も行われていたと言われるが、本作もその一本と見られる。
なお、参考文献に挙げた雑誌『禁酒之日本』には南湖院の広告が確認できる。
検閲時報の記載と比べると、元素材である上述のフィルムの尺長は223.418mであることから、ほぼ完全版であると考えられる。
成瀬才吉は岡山県禁酒同盟会に所属し、「全國禁酒映畫宣傳會長」の肩書を名乗って禁酒活動に映画上映を取り入れて自ら説明も行った。参考文献(『禁酒之日本』第六十四號)には、岡山県禁酒同盟会で「活動寫眞機械及フイルム等を一千六百餘圓にて購入し、一般の希望に應ずる事にしました」とある。検閲記録の申請者である靑木匡濟財團の創立者、青木庄蔵は実業家だったがキリスト教信仰の立場から社会事業に乗り出し、特に禁酒運動に力を入れて日本国民禁酒同盟の結成に携わり、禁酒運動とアルコールの調査研究を目的として財団を設立した。参考文献(『禁酒之日本』第九十七號)では、青木庄蔵と成瀬才吉を含む一行が秋田県の大館周辺を講演と上映による禁酒宣伝で巡回したことが報じられている。参考文献(同、第九十八號)には財団に講演映画部を設置して、映画と講演による禁酒教育の全国的普及を始めたことが告知されており、検閲記録の時期とも重なることから、本作もその活動に使われたと考えられる。 - 参考文献
- 「活動寫眞應需 ドシ〳〵利用せられたい」(『禁酒之日本』第六十四號、1925年)46頁
「活動寫眞で全縣下宣傳 ―大館禁酒會―」(『禁酒之日本』第九十七號、1927年)57頁
靑木庄藏「講演映畫部の開設に就いて」(『禁酒之日本』第九十八號、1928年)
牧野虎次『日本禁酒事業に於ける靑木庄藏翁』(靑木匡濟財團、1928年)